食べものは残らない

料理も芸術だとか言うけれど、

音楽や絵画のように繰り返し楽しめたり、

後世に残っていくものではなく、

料理という作品は食べてしまうと消えてなくなる。

食は生きるために欠かせないもので、

日常的にも溢れているものだから、

たしかに、いちいち芸術だの作品など言っていては

収集がつかなくなってしまう。

その中でも、しっかりとした思想や哲学を持った上で、

料理を作ってお客様に食べてもらって、

そこに対価が発生して、感動が生まれるものは、

やっぱり作品として成立していると思う。

でもその線引きはとてもむずかしい。

食べる人によって感じ方も違うし、

思想もなく作っている人もいるから。

きちんと理解しているのは、きっと少数派だろう。

なぜならそれはどう考えたって、

世の中に食がたくさん溢れているからで、

高級レストランからインスタント食品まで幅広い。

例えば、お金の量は限られているから希少価値があり、

使い方に慎重になるけど、言葉は溢れているから、

そのものに価値はなく、誰でも簡単に暴言も吐ける。

だから全員に料理の作品としての良さを、

伝えるのは不可能だと思っている。

でも言葉はたくさん溢れていようとも、

意識次第で丁寧に扱えるし、個人の判断で価値を

持たせることはいくらでもできるから、料理だって

わかる人に深く刺さればそれだけで十分ではないか。

食べたものは胃に残らないけど、

心になら残せる方法はきっとある。

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