現象を捉える感性を大切に

時間は否応なく等間隔で平等に流れていく。

でも人それぞれ状況に応じて時間の捉え方が変化する。

待ち遠しい時間は長く感じるし、

楽しい時間はあっという間に過ぎていく。

脳の仕組みはまだまだ解明されていなくて、

幾層にも重なった大小の出来事や感情が奥行きを

つくることで、適切な言葉で説明ができなかったり、

データや数式で表現できない範囲の現象が日々起こり得る。

つくづく人間は高性能な生きものだと感心する。

テクノロジーやAI技術は、数字を管理することで、

人間にとって便利で快適な文明を与えてくれる。

人間がしていた仕事がコンピュータに代替されて、

生産性が上がり限界費用がゼロに近づいていくのは、

無駄がなくなり素晴らしいことだと思う。

あまった時間で自分の好きなことができるなら、

きっと多くの人の人生も充実することになるだろう。

悲観するのではなく、理解を深め共存していけたらいい。

料理やサービスといった単体の作業は

ある程度ロボットができるようにはなるけど、

お店が醸し出す総合的な雰囲気は、

個人の思いによって生まれる仕事であるから、

これからも人の心に寄り添う装置としてなくならない。

感情の奥行きは数字では表現できないし、

シンギュラリティは来ないとまことしやかに言われている。

人と人が関わるコミュニケーションは、

表情や気分や匂いや音、様々な要素が複合的に重なり

印象や関心に意味をつけて、それぞれに解釈をしていく。

恋愛のときめきなんてまさに説明も予測も不可能な現象だ。

どうせ人間という容れ物に在るなら、

感情の起伏を最大限にして、心を動かすことにこそ

豊かさや充実感があるのではないかと思っている。

そうするためには、いっけん生産性がないように見える

映画や音楽やアートなどの芸術や、文学や哲学などに

ゆっくり触れる時間が重要なのではないでしょうか。

食べるという行為もその可能性を秘めてると思うし、

お店というのはその接点になりうると思うから、

作り手は食べてどういう感情になってもらうか、までを

設計し、食べ手としてはどう受け取ったかを感じたい。

まだまだ伝えなければいけない価値があると信じています。

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