再現できないもの

たとえレシピがあったとしても、

火の入れ方や、食材の状態や、作り手のコンディション、

他にも定性的な様々の要因があって、

必ずしも常に正確に同じものができるとは限らない。

少量に作るのと、大量に作るのでも違うし、

自分が思い描く味に近づけるために、

微調整して試行錯誤しながら、何度も作ることが

商品としての料理にとって一番の理想だ。

そう偉そうに言いながらも単発営業で、

カレーやスープや恵方巻をしていたり、

クリスマスのメインでもしていた、

ブイヤベースやビーフシチュー、ボルシチなども、

一回限りで大量に作る料理をしていた記憶が蘇る。

これはこれで、明確なレシピがあるわけではないので、

自信をもって宣言はできないけど、

感覚によるところが大きく、一発勝負という緊張感は

このうえない集中力でいつも取り組んでいた。

正直、同じ味を再現するのはむずかしい。

料理に正解はないから、自分がどこで納得するか、

相手がそれを食べてどういう感情になるかが大事。

安定した味を提供するのも信頼だけど、

見方を変えれば、その時その場でしか食べれないのも

特別感があって希少価値になりうるのではないか。

ライブ感というか、臨場感というか、いつ行っても

買えるというより、足を運ぶきっかけになる。

実際に今まで普通に営業してた時より、

一定のお客様と会う頻度が多くなったりする。

お客様の購買欲の動線をデザインするのも、

ひとつの方法として考える余地があるような気がする。

サービスのクオリティも均質化しているので、

他店との差別化になるかもしれない。

予約の取れないレストランとかは、

その辺の設計を上手にしている。

とはいえ、それがお客様目線になれているのか、

よく考えないといけなくて、予約をするという

ひと手間のハードルは想像以上にまだまだ高く、

どうしても人間はめんどうくさがりである。

何をよしとするのか、何を目指しているのか、

なかなか思うように定まらないでいる今日この頃。

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