対面の温度

三日間だけランチボックスを販売してみた。

きっかけは、春の陽気を楽しんでいただきたいのと、

イートインにしたことによって、小さなお子さまたちを

遠ざけてしまったという反省から。

あと、前の容器が余っているからという理由も正直ある。

今までやっていたメニューを再現しただけなので、

動線も慣れているし、それほど悩まずにできた。

表面を掬っただけでは、もはや何のお店かわからないと、

賛否両論の声があるかもしれないけど、

注文がある、楽しみにしてくれている、感想をいただける、

そんな人たちがいるだけで救われるし、やっていける。

そうして利用してくれるお客様は、上辺だけではなく、

考えに共感をしてくれているというのも肌で感じる。

反対に、新しいお客様に届きづらくさせているのも、

懸念されるし悩ましい部分でもある。

分断を生んでいることに認識をしつつも、

好みの問題でもあるし、相性の問題でもあるし、

全員を満足させることはできない、と自分に言い聞かせる。

慣れ親しんだお客様にまた会う。

コロナでオンラインが主流になりつつあるとはいえ、

実際の対面で交わすコミュニケーションは、

テイクアウトという特性上、短時間ではあるけど、

会話以上に、空気感や温度感などの目に見えない情報を

交換しているんだと、あらためて実感する機会になった。

当たり前に人間は超高度な生物で、コンピュータでは

簡単に超えられないエモーショナルな部分が存在する。

人によって感度の差こそあるだろうけど、

言葉では説明できないような感覚、やさしくなれる感覚、

ぬくもりのような感覚は、誰しも持っている。

そしてそれは人間である以上、忘れてはいけない感覚。

食べものを通して、それを感じることが大事なんだと思う。

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