美しさと限界

職人技はとても尊い。
伝統工芸などに見られる一点ものの価値、奥深い魅力。
一年をかけて、一つの腕時計を一から作る人もいる。
その人にしかできない、歳月を重ねてこそ身につく技術。
効率は悪いけど、かけた時間はそのプロセスをも含めて、
言葉では言い表せないほどの美しさを作品に与える。
でも、数千円の耳かきが目の前で売られていても、
きっと買わないのは、その背景を知らないから。
その人がどんな想いで、それを作ったのか、
どこにこだわってるのか、その物語を知らないから。
その良さを引き出すためには伝え方にあると思っています。
作って終わりではなく、作ってからの届け方を工夫すれば、
もっとチャンスは広がりそうなのに。
ところが、需要が多くても、生産量に限界があるから
供給できないし、需要が少なければ、
活動を続けていくことができない。
その折り合いがとてもむずかしいのですが、
時代は否応なく大量生産に向かっていて、
人々の興味や関心も、効率化が基準になりつつある。
ファーストフード、ファストファッション、5G。
びゅんびゅんと早そうな言葉が駆け抜けていく。
みんながいいと思うものを、いいと思い、
似たような人たちが街に溢れ、簡単に人を傷つける。
どうも効率化が個性や人間の美意識を
奪ってるんじゃないかと、懸念している。
散り際の美学が語るように、
限界があるからこそ美しいと思えるのかもしれません。
美しい世界が好きです。

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