例えば美術館や映画館は、
だいたい値段の相場が決まっていて、
違和感なく生活に浸透している。
記念グッズは別として、お金を払って買っているのは、
時間や空間や体験の部分で、物質的には何も残らない。
演劇や遊園地も同じようなものかもしれない。
飲食店はと言えば、値段は安いものから高いものまで、
差が大きく、食べると身体的には満たされる。
でも数が多いから競争は激しく、価値もそれほど高くない。
それが市場の原理だし、フランスのように文化的背景の
バックアップがない限り、料理を作る人の価値を
向上させるのは、なかなかむずかしい。
資本力のある企業が、安くで品質の良いものを作ると、
消費者はどうしたってそちらに流されてしまう。
食事は日々に欠かせないもので、健康が大事だと
わかっていても魅惑的な商品に負けてしまう時がある。
市場の原理を覆すことは不可能だけど、
先の美術館や映画館のように、体験価値に焦点を
当ててあげれば、可能性はあるような気がしている。
料理を作る人の価値を上げるということに。
社会的地位を上げるということに。
一概には言えないけど、料理を作る人もクリエイティブで、
技術と経験があって、立派にアーティストだと思う。
いや、料理に限らずものづくりに携わってる人たちは、
みんな一生懸命でもっと報われてもいいのにと強く思う。
決して自分のことを言ってるのではなくて。
これからの時代だからこそ、その可能性があって、
伝えていく役割であることを感じずにはいられない。
作り手の想いをしっかり汲み取って、
心を込めて言葉に訳して届けれるように。