便利さは時に人の関係性を希薄にする傾向がある。
そこに潜んでいるのは、何か物事に費やした時間と、
トレードオフの関係であるのは事実だと思う。
伝達手段で言えば、石版に文字を彫っていたことが、
紙の発明で手紙となり、やがて電話からメールに移行した。
音声認識の精度が上がり、もっと時間は短縮されるだろう。
未来ではもはや脳同士で会話をしてるかもしれない。
早さの代償として優しさが失われていく。
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人間は想像をすることができる。
相手が自分のために費やしてくれた時間を想像することで、
喜んだり感動したり、心が動くものだと信じてやまない。
それは決して数値化できない価値で、とても人間的な行い。
プレゼントを悩んで選んでくれた時間、
予定を立ててくれた時間、準備をしてくれた時間、
料理を作るためにかけた時間、
その背景を想像することが心の豊かさにも通じる。
これらを表すベストな比喩表現としての、
体温がある、ということ。
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この先、便利さが人間を人間たらしめる感情を
奪ってしまうのではないかという懸念がある。
予約をしているにもかかわらず、平気でドタキャンを
してしまうのは、システムに依存しているから。
人と人が直接やりとりをしなくなると、
この勢いは加速していきそうな気がする。
便利に慣れてしまうと、思い通りにいかない時に、
負の感情さえ抱かれてしまいかねない。
便利によって失われるものに、気づけるかどうか。
便利で満たす欲はどこまでいってもキリがない。
大きな視点で見れば、地球の貴重な資源を
奪っていることとも相関している。
想像力をはたらかせること、周りをよく見てみると
意外と体温のあるものはすぐそばにあったりする。
それに気づける感度を持つことはもちろん、
まずは自分から相手に体温を与えることから始めたい。