直接会うこと

テイクアウトはたくさんの人と出会える。

少し言葉を交わすだけでも、

たとえ決まりきった挨拶だとしても、

こんな時代だからなのか、

直接会って話すことが価値を帯びてきている。

テイクアウトは下準備に時間がかかる。原価もかかる。

孤独な作業を乗り越えて、お渡しするのは一瞬。

それでも応援してくださってるお客様と接する時間は、

対面であり、オフラインであり、

人間が直接会って受け取る情報や感じる温度感は、

言葉でうまく説明できない神秘性が宿っているよう。

はたから見れば、何のお店かよくわからないのに

こうして注文をいただけるのは本当にありがたいこと。

今でも電話ではお弁当の問い合わせが多くて、

そう認識されているのに期待に応えれないことには、

少々申し訳ないと思いながらも、

どこか割り切れている部分もあって複雑な気持ちになる。

イートインにしかない魅力がもちろんあるし、

テイクアウトにしかない魅力もあって、

利用目的それぞれに属したお客様がいるので、

全員の願いを叶えるようなお店作りはほぼ不可能だ。

どんどんオンラインの世界になってきて、

実店舗ビジネスはこれから不利になってきそうだけど、

直接会うことの価値も高まってきているという

矛盾がどこに落とし所を見つけるのかがまだ見えない。

生まれた時からデジタルに囲まれていたら、

人と直接会う時に感じる感性はなくなっていくのか、

もしくは人間として誰かに会いたいという本能は

尊厳を保ったままでいられるのか。

価値観が時代によって変化していくのは

逆らうことのできないことだけど、直接会うことの

価値が完全になくなってしまうのはさみしい気がする。

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