ひと手間の瑣事

今回のお弁当はいつもとなんか違った。

なんとなくパズルのピースがはまったような感覚。

決断する前日までは中華料理にしようとメニューを考えて

いたのに、しっくりこず急遽和食でいくことになった。

今までも昆布と鰹の出汁を作ったことは何回かあったけど、

最近特に一番出汁が醸し出すやさしい風味にうっとりする。

その理由として考えられるのは、もうひとつのお仕事が

影響してると思っている。

他のお店の店主さんにお話を聞いていると、みなさん真摯

に料理と向き合っておられるし、その姿勢を目の当たりに

する度に背筋が伸びるし、とてもいい影響を受ける。

ある取材の時に出汁を引いている(出汁をとることを引く

と言う)場面に遭遇して、なんともいい香りが漂ってくる

ではないか。

この機会がないと気づけないことだっただろう。

和食は引き算の料理と言われていて、いかに余計なものを

足さずに素材の味を引き出せるかが腕の見せ所だ。

もともとそのエッセンスは自分の料理哲学でもあるけれど、

今さらながら和食の魅力を再発見したような感覚に陥った。

でも、ただシンプルにすればいいというものではなく、ど

こかにひと手間のアクセントを加えることによって、全体

が引き締まり、見た目にもバランスが整う。

今回のお弁当で言えば、もちろん一つ一つ手間をかけて丁

寧に作ったけど、きんぴらを春巻にしたことと、マグロを

炙ったことが大きいと思っている。

別に春巻にしなくてもいいし、炙らなくても完成するから。

これは美味しくなるからという理由だけで動いていない動

機であって、見た目の色が増えるし形に変化が生まれるか

らそうしたのだ、きっと無意識的に。

ちょっとした工夫やひと手間の中に含まれている大切なこ

とは、”ひと手間を加えようとしている行為そのもの”に感

情が乗っかってることが意味のあることなのではないかと

気づいた。

今回は特に、その気持ちがお客様にも伝わった気がした今

年の締めくくりにふさわしい出来事だった。

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