昔は醤油が足りなければ近隣の人に借りたとかよく言われる。
多く獲れた野菜なんかも交換し合ったなんて言う。
日本は特に稲作文化なので、生きるために大人も子供もみんなで助け合わないといけなかった。
それが今の家族観や結婚観、同調性などを形成していたりする。
協力することは素晴らしい、でもその一方で現代では“貸し借り”の考え方や、与えられる心の負債感が時に互いの関係をぎくしゃくさせることがあるように思う。
誰かに何かを施してもらってばかりで申し訳ない気持ち、こんなにも与えているのに何も返ってこない不服な感情。
助け合う行為は厳密に数値化できないので、どこまでも両者の感情によるところなのだけど、今は昔のように気軽にフラットに関係性を結べなくなってしまったような気がする。
見えない価値よりも、お金で交換できる価値の方が楽で後ぐされもない。
贈与。
何かを与える、自らが先に与える行為や社会はとても理想的だと思う。
今でも未開の民族では贈与経済が成り立っていると言う。
この本では新しいテクノロジー技術(NFTやweb3的な)を使えば、贈与経済を取り戻せると主張しているけど、楽な関係を覚えてしまった今、そこに戻れるとは個人的に思えない。
それでも理想的な未来を迎えたいし、諦めてもないけれど、道のりはとても困難のように感じた。
今となっては贈与を損得で計る人が多いのではないか。
心理学でいう返報性の原理(何か受け取ったらお礼をしたくなる気持ち)を故意に利用する人もいるだろう。
もっと人間の善性を信じてもいいはずなのに。