料理人あるあるだと思うのが、いい食材を使いたいという気持ち。
いい食材とその美味しさが必ず比例するわけではないし、同じ食材で3倍の価格が3倍美味しいとは言えないけれど、おおよそ美味しい食材は価格もそれに伴う。
美味しさをどこまで追求するのか、と同時に、どんな人に食べてもらいたいかを考えることも重要になってくる。
それには場所や環境も大きく左右するし、人の多さにも関わってくる。
高価な食材を使ってもお客さんが来なければ意味がない。
客層のヒエラルキーはなんとなく出来上がっている。
お金持ちが多く住む街、そうでない街、または観光地やローカルな場所。
店舗の賃料と人の多さはある程度比例している。
自分の料理に見合う場所にお店を出すのか、場所の特性に合わせて自分の料理のクオリティを合わせていくのか。
意外とミスマッチなお店が多いような気もする。
そして料理人も葛藤する。
いい食材を使いたいけれど、価格を高くしたらお客さんが来なくなるのではないかと。
いい食材と言ってられず、現状の品質のまま物価高騰で大変なのだけれど。
商品の値上げが最適な選択と分かっていても、そう簡単にできないところにサービス業の人情が垣間見える。
今までのお客さんを置いてけぼりにしてしまう気がして。
安価なお店ほどお客さんのクレームが多いと言う。
収入の多寡が人間の教養レベルに基づいていることを指しているのかもしれない。
割引や値下げをしてしまうと、それを目的として利用する人が増えてしまう。
理想はお店を、その料理や人を目的に食べにきていただく。
だからどんなお客さんに来てほしいかは重要な要素だ。
価格帯によって客層が決まってしまうし、客層によっても価格帯が決まってしまう。
その中でできるだけいい食材を使いたいと思うのが料理人の心情である。