料理人と内向性

料理に限らず芸術系の仕事をしている人は内向的な人が多いように思う。

感性が鋭敏で、観察力に長けていて、作業は繊細で、ときに言葉でコミュニケーションをしない。

嘘が嫌いで、自然に敬意をはらい、情熱は静かに、溢れんばかりの想いを作品で語りかける。

作品とは、氷山のように表に見えているほんの一部分であって、その下には技術、知識、価値観、思想、在り方などたくさんの見えない部分によって支えられ成り立っている。

その支える部分を醸成させるためにも、自分の内へ内へと問いかけ、答えを出していくには、少なからず内向性が欠かせなかったりする。

 

よくビジネス界隈では、作る人と届ける人が別で、それぞれの得意を活かせている場合うまくいくと言われる。

小さなお店なら夫婦でやっていて、主人が料理、奥さんがサービス、みたいなパターンをよく見かけるし、実際に細々とうまくやっている気がする。

言い換えるなら、内向性と外交性の組み合わせではないだろうか。

どちらも欠けてはいけない要素で、二つ揃うことで相乗効果が生まれる。

世で評価されているような人は、一人の中にうまく内向性と外交性を使い分けているから優秀なんだと思う。

 

たとえ料理を美味しく作れても、お客さんにうまくアプローチできなかったら意味がない。

作品にどれだけ強い思いを込めていても、言葉で表現しなければ相手には伝わらない。

誰でも発信できる時代に、発信できない人は大勢に埋もれてしまう。

それでも内向性だからこそいい作品が作られることも確かだ。

一人で届けるのが難しいなら、上手に届けてくれる人と組んだ方がいい。

そのマッチングは時にぶつかることもあるけれど、うまくいけば可能性が広がる。

探すこともできるけど、その出会いは往々にして運命的でもある。

関連記事

  1. 終わりなき欲の果て

  2. 心と体と

  3. 自分に合った方法で

  4. 再現できないもの

  5. 価格の壁

  6. 早さと引き換えに

0
Would love your thoughts, please comment.x
()
x