飲食業界は慢性的に人手不足で、時間帯との相性がいい大学生のアルバイトにずいぶん助けられているように思う。
ましてや料理人になりたい若者は今の時代にいるのだろうか。
昔は料理人のメデイア露出も多く、かっこよさに憧れて飲食を志した人もきっと多い。
今は社会的地位も低くブラックな労働環境や大変そうな情報ばかりが出回っている気がする。
料理は誰でもできることだけど、対価が発生する料理にはセンスが欠かせない。
品質、状態、想像、考えるべきパラメーターが多く、視覚、味覚、嗅覚、感覚的な部分で構成されていることを考えると、決して誰でもできることではない。
勘、観察、配慮、おもてなし、経験を重ねて積み上がっていくものだし、独立したなら、経営、発信力、関係性づくり、生産性のない雑用、やるべきことが山のようにある。
それでもこれだけ飲食店が細分化して多く、閉店するペースが早いとわかっていても、新しいお店ができるのは、そこに「楽しい」と「美味しい」いう動機があるからに違いない。
何かを作るというのは根本的には人間にとって楽しいこと。
食は命との距離も近く、誰にとっても身近にあるものだから。
美味しいは、自分の喜びも大事だけど、相手と共有できるものとしてコミュニケーションのきっかけにもなりうる。
また、相手からいい評価をもらえて嬉しくない人はきっといない。
料理人はいい仕事だと思う。
自然にも近く人間の根源的な楽しさと他者からの承認が得られる魅力的な職業だ。
それでも料理人を志す人が減っているのは、情報によってものの見方に偏りが生まれているからではないだろうか。
安くて大変な仕事というネガティブな情報に限って、拡散されて頭にも残りやすい。
それ以上に業界の仕組みや構造が問題でもあるのだけれど。。
効率化に限界のある仕事はこれからどうなっていくのだろう。
淘汰されるのが自然の摂理だとしたら人類は楽しくない方に向かっているのかもしれない。