つくれる量の限界

一般のお客さまは飲食業界の内情をどれくらい知っているんだろう。

材料費やら、消耗品やら、家賃などの固定費から売上まで。

食は身近なものだけに理解はしやすいだろうけど、具体的な数字や感覚はきっとわからないだろう。

同じ身近なものでも自動車業界における原価や整備費がまったくわからないように。

どれだけ食材にこだわって、時間をかけて丁寧に料理を作っても、お客さまが目にするのは商品という“点”であって、工程である“線”の部分はこちらから説明しないかぎり(基本的には)伝わらない。

周りを見渡せば今の世の中は商品で溢れていて、そのひとつひとつには出来上がるまでのストーリーが存在する。

ところがそのストーリーに思いを馳せるほど、みんな時間に余裕があるわけではない。

自分の興味関心を取捨選択して上位のものをよく知ろうとする。

商品を作っている側は、お客様の興味を引くためにあの手この手で巧みな戦略を練り、人間の行動心理をハックし、買ってもらおうとする。

それができるのはもう資金力のある企業の方が圧倒的に有利で、個人商店はがんばってSNSで発信するしかない。

でもお客さまに内情を、ストーリーを、知ってもらうことが正しいことだとも思えない。

わからなかったらわからなかったで、寄り添う、または、わかりやすくする、というのも一つの手だと思う。

テイクアウト料理は座席のあるお店と違って満席という概念がないので、お客さまに限界を伝えるのがとてもむずかしい。

当日に用意した分がなくなることを完売と呼ぶのはいいけれど、まだ前日の段階で完売と言うのはなんか違う。

だってまだ間に合うから。

それでも料理はどこまでも作れる量に限界がある。

一人なら尚更、仕入れのことや仕込みのことを考えると物理的にできないことがある。

そんな内情を一般のお客さまはどこまで理解してもらえてるのだろうか。

最後まで営業システムを使いやすく、わかりやすくできなかったことが心残りではある。

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