料理人を志したなら、いつかは自分のお店を持ちたいと思うのが一般的な考え方だと思う。
周りもまた美味しい料理を作る人に対してお店を待つことを勧めたりする。
自分も当たり前のように自分のお店を持つことに憧れ、実際にお店を持つことができた。
ある程度の経験とお金さえあればお店を持つことはそうむずかしくない。
飲食店は手軽に開業できるからこそ、数が多くて競争が激しくなり、その分閉店するお店も多くなる。
この度、やむなくお店を手放す選択をした。
自分が築いてきたブランドだし、お客様との信頼関係も含めて、お店が自分のアイデンティティ
でもあったので、もちろんずっと続けていくことが理想だった。
なんでも自分で決めることができて、評価もダイレクトに受け取れて、時間の自由度も高く、嫌なことを嫌と言える環境はストレスがなく、この上ない理想的な生き方だと思う。
しかし資本主義の攻略はそう簡単ではない。
キャッシュフローの管理、マーケティング的な行動、告知、宣伝、企画作りなどのスキルは、料理をしていたら学ぶ暇がない人がほとんどだろう。
例に漏れず経営のセンスがなかったので、お店を維持し続けていくのがむずかしくなった。
本意ではなくやむおえない判断だった。
だからと言ってお店を手放すことは失敗なのか、というとそれは違うと思っている。
料理の表現はお店だけではなく、料理研究家や料理教室があるようにフィールドを変えればやり方も見せ方も千差万別なように。
お店をしていた期間に得た知見やお客様との信頼を活かして、今後どのように表現していくかが課題になっている。
むしろお店を手放した後にしかわからない景色が待ってるような気もする。
何事も失敗ではなく次に進むための新しいステップにしか過ぎない。