飲食店にはいろんなお客さまが出入りする。
年齢差も、職業も、身分も関係なく多様なのは、食が間口の広いものだからだろう。
そういう意味では、いろんなお客さまと接することができたのも、お店をしたからこそできるいい体験だった。
不思議とどのお店も、その世界観に合ったお客さまがつくようになる。
雰囲気というか、カラーというか、店主のアイデンティティはまず外観でわかってしまう。
使っているフォントや色味やデザインを見て、すでにお客さまは見定めをしている。
その上で、外側と中身の世界観が統一されてないと違和感が生まれる。
お店作りは店主の思想や内面を拡張したものだから、突き詰めれば個人と個人の付き合いかもしれない。
8年間たくさんのいろんなお客さまと出会った。
一回だけの人も、何度もな人も、SNSな関係の人も、特別な日に必ず利用してくれる人も、友達の距離感で接してくれる人も、他の誰にも話してない悩みを打ち明けてくれる人も、プライベートな付き合いにまで発展するような人も、また来ると言ってもう来ない人も、何も言わず定期的に来る人も、上辺だけな人も、心からの人も、おせっかいがすぎる人も、息子のように思ってくれる人も、わざわざ遠くから来てくれる人も、同業の人も、他にもたくさんのいろんなお客さまがいた。
お客さまそれぞれのシーンで、それぞれの物語があり、それぞれの関わり方がある。
食への関心も人それぞれ、自分の料理はどこまでお客さまの人生に色を添えれたのだろう。
覚えてもらわなくてもいいけど、覚えてもらえてるとうれしい。
それに味の記憶は決して侮れない。
いつかまたどこかで料理を通して再会できるかもしれない。
確実に言えることは、本当にいいお客さまばかりだった。