本棚とショッピングカート

好きなもの、好きなことで個人の人格はある程度つくられている。

好き、という感覚は明確に言葉で説明することがむずかしいように思う。

なんとなく、気がついたら好きになっていた経験は誰にでもあるだろう。

厳密に言えばその過程で影響している要素があるかもしれないけれど、人間の脳はそんな複雑さを簡単にまとめてくれる。

肩書きや職業以上に、その人らしさを現すものとしてスマホの閲覧履歴などは顕著だろうけど、そのデータはプラットフォーム側にしかわからない。

データ以外でリアルに個人のアイデンティティを他者が覗けるのは本棚とショッピングカートだと思う。

もちろん本棚はそう簡単には見れないだろうけど、より具体的にものの見方や考え方を垣間見ることができる。

どんなジャンルが好きなのか、どんな著者が好きなのか、短い会話だけでは辿り着けない内面の奥行きが表れている。

だから本棚を他人に見せるのは恥ずかさを覚える一方で、はじめましての人と関わるときは挨拶もそこそこに本棚を見せ合った方が会話がスムーズになりそうだ。

ショッピングカートも暮らしや食など生活感がよくわかる。

買いものに行った際に他の人が何を買っているか、職業柄なのかついつい気になってしまう。

冷凍食品、お菓子、お惣菜、カートに何が入っているかである程度その人の好きなもの、家族構成も何となく見えてくる。

今やコンビニごはんで食事をすます人も多いので、そういうのを見ると時代の移り変わりを感じてしまう。

どんなお店で何を買うのか。

つまり買いものの内容が示すのは当たり前にその人の“好き”が表れているので、雑談や履歴書で経歴なんかを知るより話が早いと思ってしまうのは自分だけだろうか。

その中でも人気だから買っているとかより、自分に軸があってきちんと選んで買っている人には好感が持てる。

SDGsとか、環境にいいとか、オーガニックとか、エシカルとか、聞こえのいい言葉をうた過ぎるのではなく、進んで実践している人が素敵だと思う。

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