なぜ外で食べるごはんは美味しいのか

ゴールデンウィークといえばバーベキューをする人も多いと思う。 

バーベキューというイベントはよくよく考えてみると、食材を炭で焼いて食べるというシンプル極まりない料理だ。

それなのに普段は料理を面倒くさがる人でさえ、率先して行動し、なおかつ意気揚々と楽しんでいる。

なにがそうさせるのか。

答えは簡単で、「屋外の開放感(天候が良ければなお良い)」と「一緒に食べる人との関係性」という材料が揃えば、調理技術のあるなしに関わらず大抵の食事は美味しくなるからだろう。

そしてどちらにも共通するのは「感性がひらかれる」ということ。

屋外の開放感は、毛穴がひらくという表現があるように、感性がひらかれることで普段は感じないことをより感じやすくなる。

見える景色(山や海)、聴こえる音(水のせせらぎや鳥のさえずり)、風がなでる質感(気持ちの良い温度)、鼻先をくすぐる香り(炭や花や新緑)。

それらの感覚を踏まえた上に味覚は成り立っているので、美味しくならないわけがない。

都市部でも人為的に感性がひらかれる環境を作ることはできるけれど、やっぱり自然が用意するありのままの動物としての姿に回帰させる力には敵いっこない。

文明が発展する前の遥かに長い人類の歴史における本能的な振る舞いには誰も抗えない。

キャンプの定番であるカレーライスや、ピクニックで食べるお弁当が、調理の技術を超えて、ただ屋外というだけで美味しいのは感性がひらかれるからに違いない。

何の根拠もないけれど、多くの人が同意することだと思う。

さらに屋外でごはんを一緒に食べるということは、気心の知れた家族や仲間であるケースが多い。

会食や接待など緊張する場面でバーベキューはしないし(むしろした方が成約するかもしれない)、意中の人への告白や初デートにバーベキューは選ばれない(こちらもあえてした方がいいかもしれない。吊り橋効果ならぬバーベキュー効果)。

気が合う人、好きな人、親密な関係の人といる時の安心感は、気が緩んでいる、素のままの自分でいられる、つまり感性がひらかれている状態に他ならない。

「屋外の開放感」と「一緒に食べる人との関係性」、ふたつの条件さえ揃っていれば、もはやバーベキューでなくて料理の内容はもうなんだっていい。

美味しいということは、結局のところ料理の味そのものだけではないことを示している良い例だ。

どんな環境で食べるか、誰と食べるか、いかに感性がひらかれた状態でその時を過ごすかで結果は変わってくる。

どれだけ料理が美味しくても、作っている人の態度が悪かったり、サービスの質が低かったりすると、すべてが台無しになるように、あるひとつの物事を楽しむとき、人はいろんな五感にまつわる採点項目を無自覚に感じ取って結論に反映させている。

それはきっと料理以外のことにも言えると思うから、何事も感性の解像度を上げてゆっくりじっくり味わえば、人生はより豊かな経験と記憶が醸成されていくだろう。

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