今となれば人気ポッドキャストになった「COTEN RADIO」は始まった初期の頃から聴いていた。なにも古参であることが偉いわけではないけれど、ある人が人気や有名になる前から好きだったと言えるのは、どうやら気持ちのいいことらしい。先見性があることや未来予測できることを周りに誇れるのはどういう現象なのだろう。
そんなことはさておき、ポッドキャストという耳だけの情報で歴史がこんなにもおもしろく学べることに衝撃を受けた。学校の授業で勉強する歴史は年号や事実の暗記に対して、COTEN RADIOの歴史は、どうしてそうなったか、なぜそうなったのか、を時を遡ってまで当時の背景や価値観など“プロセス”を丁寧に深掘りして説明してくれる。メインパーソナリティでありこの本の著者である深井さんの話のうまさや声質の良さはさることながら、何においてもプロセスをじっくりと時間をかけて理解できることが良質な学びになることなんだと思った。
時間をかけること。学校の授業では当然ひとつの科目に時間をかけてられない。目的は受験にあって点数を取るため、人の能力を数字ではかるためにあるから。それに暗記だけの勉強は忘れるのも早い。時間をかけて学ぶと体系的な理解ができて記憶にも定着している感覚がした。そしてそれこそが人文知を学ぶ本質的な意味につながっていると思えた。
もうひとりの著者である山口さんも昔から好きな人で、新作の本が出ればすぐに買って読んでいたくらい自分のメンターな存在になっている。ビジネス書が多いのでマッチョなビジネス論と思いきや人文領域やアートにも精通していてバランスの取れた人だなあという印象だ。発言も本質的でスマートで無駄がない。気づきが多く山口さんがおすすめしている本はどれもハズレがなかった。
そんな二人が人文知について語る対談本という仕様になっている。そもそも人文知または人文学とは何かを自分がしっくりきている解釈で言うならば、人間の本質について語る学問だと思っている。歴史、哲学、心理学、文学、芸術、宗教など、残念ながらどれも仕事やビジネスですぐに役に立つ学問ではない。役に立つとは何か、を考えだすとまたきりがないけれど、そういうことを探求していくことこそが人文学のおもしろさであり魅力でもある。答えがないと言っていいのかもしれない。正解がないということは数値化ができず万人にわかりづらいということ。そもそも世界や自然や文化に正解はない。宗教が絶対だとされていた時代から科学の時代へ、科学だって正解だとは限らない、人は倫理の側面からだって物事を判断できる。人が何を信じるかは時代によって変わっているから。正解ではなく問いを生むことが大切だと本書は強く語っている。時代や価値観は変わっていくけれど、人間の普遍的な本質は変わっていない。大昔の哲学者たちの言葉は今でも教訓になる。最新のテクノロジー技術に人間の精神は追いついていないと言われている。変化が目まぐるしい時代に必要なのがまさに人文知ではないだろうか。迷ったときの行動指針になるし、物事の本質を見極めれるようにもなれる。その学びは時間がかかり見えづらくすぐに実感できないけれど、コツコツとやることでしか高みには行けない。でもつまり人生の目的は高みに行くことではなくプロセスを楽しめるかどうかなのだと思う。毎日の学びや気づきをおもしろいと思える考え方を身につけると、それはきっと幸福や豊さにもつながっているだろう。


