メイキング、パスタのふりかけ

ようやく発売できた「パスタのふりかけ」。
最短で出せるのが立春だったため、そのように動いたのはいいけど、恵方巻やお弁当と重なり少しバタバタしてしまった。
急いだ理由として当初は去年の11月に発売の予定だったから。
10月に刷り上がってきた大量の缶のデザインの微細な大きさや色味がやり直しになり、年末年始をはさみ、余計に時間を要してしまった。

ファーストデザインは2案、色も黄色だった

思い立ったのは去年の4月、本を読んでいてあるお店がコロナ禍におけるテイクアウト対策として、もともとイタリア料理に存在するモッリーカ(パン粉をカリカリにしたもの)に独自のアレンジをして”パスタのふりかけ”として提供しているという記述を見た時。
何よりもそのネーミングに強く惹かれた。
おそらくイタリア料理に精通している人なら、なんてことない料理のひとつに過ぎないと思うけど、展開の仕方によってはおもしろくできるのではという直感がはたらいた。
この世にオリジナルのアイデアは存在しなくて、既存のアイデアの組み合わせが新しいだけとはよく言われている言葉。
料理で言えば食材の組み合わせ次第で新しい料理ができるし、REATABLEの活動も視点を変えて見ることで既存の価値を解釈しなおそうという試みで、自分の中に流れる根底の思想としては真似をしているという違和感もなく、むしろ展開のしやすさやネーミングのおもしろさに伸びしろを感じた。
しっかりした作り込みとプロモーション次第で新しい価値を与えられるのではと。
何よりお店で実際にパスタを提供していることに説得力も含まれる。

実物を見ると黄色がくっきり見えないためやり直し

初めてプロのデザイナーさんに仕事を依頼した。
REATABLEの活動を進めている中で知ることになったrashisaさんと世界の捉え方や姿勢に親和性を感じたので迷わずにお願いしたのが6月。
それから綿密なコミュニケーションを重ねて世界観を擦り合わせた。
デザインの仕上がりは到底素人の考えには及ばなくて、プロフェショナルの凄さを痛感した。
得てして今の時代は一般の人でも簡単にデザインができるようなツールが溢れているけど、やはり簡単さの中にはどうしても思想の奥行きが欠けてしまうように思える。
自分で作る方がコストもかからないし、それっぽくはできてしまうけど、どこか作品に対する思い入れに強度は生まれにくい。
今回の一番大きな気づきだったのは、その思い入れの部分だった。
コストをしっかりかけているからこそ、相手はそれに応えようと心を込めて作品と向き合う。
そしてコストをかけた上に、相手が向き合った作品を受け取ったからには、お客様にきちんと届けたいというインセンティブがこちら側にも生まれる。
自分だけで簡単に作っていたらそんな感情と挙動は決して生まれないだろう。

同じオレンジでも3種類の中から選ぶむずかしさ

相手が一生懸命作ったものを受け取り、また違う相手に渡していく。
それはお互いにとって交換の中に生まれる好意の返報性で、生産者とお店、お店とお客様、も同じような構図になっている。
生産者が手塩をかけて作った食材は美味しさそのままにお客様に届けたいという気持ちになり、お客様はお店の人が作った料理に同じような感情を抱く。
それこそがいい循環であり、社会という人と人が関わり合い営みを行う場なのだと思う。
金銭的価値の多寡もそこではいい指標になる。

色の変更と文字のバランスの変更で発売が延期

HACHIさん、写真についてもプロの仕事に感心した。
興味のある分野なので、カメラの性能の違いこそあれどクオリティの高さをより実感できた。
自分もこんなふうに撮りたい、という気持ちになった。
あまりにも綺麗すぎる写真は現実とのギャップがあり、今までは懐疑的だったけど、美味しさを想起させて人の心を動かすためには、商品を最大限に魅せることが重要であると再認識させられた。
質は追求すればいくらでも高みにいける。
いいものを知ってしまったら、もう後戻りができない。
それでも一定ライン以上の質には持っていけたので、この体験にはとても満足している。
自分ももっと質の高い仕事がしたいと思わせてくれた。

光と影をつかまえる
実物と写真との距離感
風景が与える心地よさ

どこか時間に余裕のない今の世の中。
料理を手間ひまかけて作るようなことはこれからもしなくなりそうな予感がする。
でもそれは決して悪いことではなくて、どこかきちんと料理を作ることが良き人のように思い込まされている側面もあったり。
そもそも料理は素材さえよければ工夫を凝らさずとも、焼いて塩を振るだけでじゅうぶん美味しい。
たとえ簡単でも、たとえ味がいまいちでも、わざわざ料理を作るという行為の中にこそ気持ちが入っている。
料理はそんなに難しくなくていい、シンプルな料理にパスタのふりかけをかければ見た目も食感も香りも華やかになる。
そんな宣伝文句もたくさんの人に知ってもらい届けるためには必要なアクションであることを学んだ。
思い立ってからけっこうな時間がかかってしまった。
いいものを作ることの難しさを知った。
発売したから終わりではなく、ようやくスタートラインに立てただけ。
これからの展開が関係性の始まり。

いいカメラがほしい
もっといい仕事がしたい

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