時代はまさに成熟を迎えていて、あらゆる物のコモディ
ティ化が進んでいるから、品質に差がなくなってきてい
るので、時間的価値やブランディングをいかに上手にし
ていくかが、今後生き残っていく上で重要になってくる。
飲食店も同じように、どのお店も料理が美味しいのは、
もはや当たり前で大前提条件になっている。SNSの潮流
に乗っかって映えや見た目の工夫で、趣向を凝らしてる
だけのものに、みんなが飽きてきているのではと感じて
いる。もうあと差をつけれるとしたら、働いている人の
魅力だけしか残っていないような気がする。ただでさえ
商売は人ありきだと言われているのに、多くの人が機能
性を求め、人との関係性を構築できないまま、新しいお
店を探索し巡ることが目的となってしまうことが、飲食
店の年々高まる廃業率と相関しているのではと思わずに
いられない。風の時代と言われているのも、聞き流せな
いほど、定量化できない質的なものに関心が移行してい
く様は、まさにお店にとっての内在的な人の物語と相違
がないのではと確信している。
なにも奇をてらう料理でなくていい、見栄え重視の料理
でなくていい、まっすぐストレートでシンプルな料理に
どれだけ自分の情熱や物語を上乗せできるか。お客様に
どう発信して、どう伝えていくか。あの人が作る料理を
食べたい、あの人に会いに行きたいということが、お店
に行く動機になるならば、それはとても素敵な関係性で
はないでしょうか。人生はその人だけが歩んできた唯一
無二なものなので、誰にも真似ができないし、お金で買
えるものでもない。いかに好きになってもらうか、いか
にファンになってもらうかを飲食店に限らず、サービス
業はこれからは考えていくべきだと思う。
作り手の物語が重要なのはもちろん、何よりも人と人と
の関係性の入り口となる料理のクオリティが高いのは大
前提。世の中は美味しい料理に溢れ、舌の肥えた消費者
も増えているけど、結局選ばれるのは基礎的な土台の技
術の上に成り立ってる料理が、生き残っていくのではな
いでしょうか。インターネットやYouTubeを見て簡単に
真似をしたものではなく、ある程度の時間をかけて磨い
た技術には思想も含まれているから。
でもどれだけ技術や思想が優れていても、コロナを前に
してそれらの武器は何の意味もなさず、戦う術のない環
境の中で閉店せざるをえないお店が出てしまうのはとて
も悲しいけれど、これからどうすればいいかを考えるこ
とに注力を割きたいところ。失ってはじめてわかるあり
がたみのように、お店が減ってしまった後にはきっと希
少価値が出て、食べて語らうことの楽しみを多くの人が
再認識するに違いないと信じている。
今その場所に向けて自分にできることは何かと問い続け
ながら動いていこうとしている。
https://note.com/one_meek/n/n1fe820d4023b