価格の壁

飲食店をやっていく上で一番の悩みと言っても

いいほど難しいのが価格を決めること。

高くしすぎても売れないだろうし、

安くしすぎても作る量が多くなって大変になるし、

そんなことをぐるぐると考える人は多いと思う。

必要な全体の予想売上から逆算すれば、

適切な価格を出すのは簡単だけど、

時に理屈よりも感情が優先してしまうのが

人間の悩ましいところ。

おそらく料理やサービスの仕事を志す人は、

そもそも相手に喜んでもらいたいという性質をもって

始める人の方がきっと多いはず。

儲けてやろうといった野心でお店を始める人は

初めから大きく展開していくだろう。

誰にも指図されずに自分の裁量で好きな空間を作り

好きな人たちだけと関わり合っていく。

もはやそんな人たちしか周りにいない。

だからこそ悩ましいのが価格設定であって、

どうしても弱気になりがちだし抵抗があるし

高くするというのは、とっても勇気のいる行動なのだ。

ただでさえ日本の食は海外から見ても、

安くて美味しいという基準が暗黙の了解であって

文化として深く根付いている。

なかなかどうして社会的地位も一向に低いまま。

メニューの値段を一度決めてしまえば、

印刷の都合であったり、ネットに出す情報であったり

多くは頻繁に変えれるものではない。

そこに追い討ちをかけるように、材料費は高騰していく。

天災で不作になれば野菜の値段は上がることが多いし、

限りある資源が減っていけば希少価値と共に値段も上がる。

裏の事情と消費者の意識の差を埋めるのもまた難しい。

どんなサービスも価格決めは大変だとは思うけど、

飲食業界においての文化や意識や勇気の壁は、

まだまだ高くそびえ立っている。

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