春の陽気に目の前を通りゆくスーツ姿のみなさま。
生まれたばかりに会ったお客様の子供がもう小学校の入学式だなんて。
お店を始めてからそれだけの月日が経ったということ。
周りの風景に今現在の立ち位置を知らされる。
大人になると時間があっという間に感じるのは、すでに見たことのある景色だからと誰かが言ってたような。
新年度を迎えて思ったのは、料理の専門学校へ入学したのがもう25年前の出来事だということ。
よくもまあそんなに料理に携わっていたのかと自分でもびっくりしてしまう。
味や腕前がどうであれ、かけた時間は誰にも真似ができるものでないし、ちゃんと継続してきたことは感慨深い。
自分には向いてないんじゃないかと何度も何度も諦めようとしたし、途中で他にやりたいことがたくさんあったにもかかわらず、今ここにいるのはなんとも不思議なこと。
自分のため、家族を支えるため、お客様の期待に応えるため、自己実現のためとステージを変え、このままでいいのかと常に不安を抱えながらも軸にあるのはこの料理という仕事。
どの角度から見ても大変な業界に違いないけど、いい仕事だなあとは思っている。
もっとも人間らしい振る舞いである五感を使うところだったり、脳と身体性が同時接続しているところだったり、相手の反応がダイレクトに返ってくるところだったり、生命を扱うところだったり。
他にもたくさんあるし、あえて抽象的に並べてみたけど、要するに「美味しかった」や「ありがとう」などの言葉をいただけること。
その言葉のやりとりが今までをつないできたとも言える。
これから先のことはわからないけど、今目の前にいるお客様に精いっぱい美味しい料理を作ろうと思う。