たったの一文で深く考えさせられるようなタイトルの本。
給料はあなたの価値なのか。
もちろんそんなわけがない。
モノの値段や価値は需要と供給で決まることがあるけれど、人の価値はそれだけでひとくくりにはできない。
給料はわかりやすい指標のひとつにすぎない。
何が給料を決めているのかと言うと、業界の構造や仕組みであることがほとんどで、どんな仕事をするかで“すでに”に決まってしまっている。
エッセンシャルワーカーと呼ばれる人たちは、重労働のわりに給料が安いのは仕組みそのものが根本的な原因なので、どれだけがんばってもその業界にいる以上は報われないことが多い。
飲食業界も多分にもれず利益率の低い仕組みになっている。
反対に、高収入なのは今ならテクノロジー業界だし、免許や資格が必要な仕事になるだろう。
矛盾しているようだけど、便利で快適な暮らしになることと、格差社会が進んでいくことは密接に相関している。
運命論ではないけれど、どんな仕事に就くのか、で給料の多寡が決まるといっても過言ではないと思っている。
仕組みというのはそれほどまで強固に存在している。
でもそのことをしっかり理解してキャリアを積んでいる人はごくごく一部だろう。
どんな人生を歩みたいか、何を大事にしたいか。
好きなことではなく給料で職業選択をする人もいれば、給料ではなく自分の好きな仕事しかできない人もいる。
個人の選択といえばそれまでだけれど、どんな業界も努力が報われる仕組みであってほしいし、給料という単一の指標だけで人の良し悪しを判断するのではなく、もっと人の魅力を俯瞰的な視点で見てほしいと願う。
そしてその魅力が給料に反映されるような仕組みの社会になってほしい。
実際に職業差別を暗にしてくる人に出会ったことが経験としてあるから。
コロナで明らかになったエッセンシャルワーカーのありがたみも時が過ぎれば人は忘れていく。
これまた運命論ではないけれど、そのような仕事に就かざる得ない人たちの出自や環境による影響も大きいということに対して想像できる気持ちを忘れてはいけないと思う。
自分がその当事者であることを認識しているからかもしれないけれど。