お客様に作りたてを食べてほしいという気持ちは、
どこからやってくるんだろう。
すべての料理において作りたてが美味しいとは限らない。
マリネ系は寝かせることによって美味しくなるし、
温かい料理はやっぱり出来立てが一番美味しい。
それぞれの料理にベストな状態はあるけど、
最終的には人の好みに集約されていく。
冷やご飯が好きな人もいるし、
温かいキッシュが好きな人もいるだろう。
でも、どのお店も提供する瞬間が、
ベストな状態であるように意識して作っている。
お弁当というジャンルを選んでおきながら、
一人で作業しないといけないにもかかわらず、
揚げ物やご飯は1秒でも温かいうちに食べてほしいと願う。
時間に合わせて仕上がるように工夫をしているから、
遅れて取りに来られたりすると、少し悲しくなる。
たくさん注文が入ると、直前に仕上げていては
とても間に合わないので、温度には妥協せざるをえない。
指定の時間にお渡しすることが最優先だから。
一般的にもお弁当は冷めているもの、という認識が
強いと思うから少し甘たりもしているけど。
とにかくいい状態で提供するということが、
譲れない性分で、業態構造に支障をきたしているのは事実。
何を変えて、何を変えなかったらいいのか。
何を守り、何を壊さないといけないのか。
いまだに答えは出ないし迷いは尽きない。
生きてるうちにこんな体験ができるのは、
贅沢なことだと思おう。