何か物事を長く続けたことがなかったから、
自分で始めたお店くらいはずっと続けたいと思っていた。
テイクアウトという業態は思いのほか、客席がない分
無限に売上が上がると思いきや、準備の時間にかける労力、
資材にかかる費用は大きく、薄利多売のモデルにしないと、
なかなかやっていくのはむずかしい。
丁寧、手仕事、高単価、まるで正反対の道を歩んできた。
きっと薄利多売のセオリー通りにやっていたら、
経営は成り立つのかもしれないけど、
薄っぺらいお客様しかついてないと思う。
同じように雑誌や取材やメディアに取り上げられても、
表面的なお客様が、表面的に消費して終わりという、
継続した関係性を保つのはむずかしいように思う。
周りの意見に流されずに、自分が納得のいくもの、
自分が満足するものを何よりも優先してきた。
そして目の前のお客様を大切にしてきた。
顔を覚える、名前を覚える、相手に関心を持つ、
さすがにすべては覚えられないけど、
それらは味や見栄えよりも大事なのではとさえ思える。
その行為はすぐに成果や結果に表れないけど、
植物が時間をかけて深く根を張るように、
何かを始めるための土台は、やがて強固になっていく。
本日をもってお店は閉店するけど、寂しいという
気持ちより、お客様の応援があるという安心の方が
大きくて心地よいのは経験したことのない感覚。
お店を続ける、というか人生を続けているのかもしれない。
今ようやくスタートラインに立てたような気がする。