よい記憶をつくる仕事

ファッションにはあまり興味がないけど、生き方や仕事に対する取り組み方に共感できる人が二人いる。
一人はマザーハウスの山口絵理子さん、もう一人は写真の著者、ミナペルホネンの皆川明さん。
他をあまり知らないだけかもしれないけど、個人的な解釈では二人とも”ものづくり”を主としていて独自の世界観で世間に広く認知されているところにとても憧れる。
商売をしている以上、経営とものづくりのバランスは大事なこと。
お店が拡大していくほどお客さんとの距離は離れ理念がうすまってしまいがち。
かといって、こだわりが強過ぎてもお客さんへ届ける範囲を狭めてしまう。
経営とものづくりの相反するようなトレードオフのような関係性に葛藤する経営者は少なくないと思う。
そんな中で先の二人はどちらかというと、ものづくり至上主義で活躍されている点において尊敬している。
このことはファッション業界のことだけではなく、飲食業界でも同じようなことが言えるから。

本の内容は、皆川さんが今まで歩んできた道のりが綴られたもの。

印象深かったところをいくつか。

創業から5年間の経理はどんぶり勘定ー

数字だけの判断では無謀なことを、自分の理想を思い描くままに新しい挑戦をしてきたからこそ今があるというのは、まさにクリエイティブを優先した結果。
周りの意見より自分を信じることの大切さを教えてくれる。

ブランドにとっての直営店は、ものも接客もすべてがそこから始まり、そこへ返っていく場所ー

実際のお客さんの声が励みになり、新しい発想が生まれる。
どうすればよろこびが生まれるかを考えることが本質的なビジネス。
買いものがネットで完結する世の中で、目の前のお客さんを大切にする姿勢は飲食店も見習わないといけない。

うまくできないからこそ、ずっとつづけられる-

得意ではないこと、時間がかかること、効率が悪いこと。
この逆転の発想はおもしろかった。
わからないからこそ知りたいと思う。
だから飲食や料理にずっと携わっているのかもしれない。

ものづくりの素晴らしさは美しさやクオリティだけではなく、今までとちがう暮らしや新しい価値をも創造するー

究極のクリエイションは生き方を変える。
数字や過去のデータからは導き出せない何かはうまく言葉で説明できない。
本能の赴くままに創造を見つけていく。
料理もクリエティブ側に立っていたい。

どこまでいっても表現者は表現せずにはいられないのだと思う。
だからこそ自分でお店をしているし、料理で表現しているし、この場所でも言葉を表現している。
定められた宿命が同じような人たちに共感する。

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