本当のお客さんは、

感性と論理のバランスはむずかしい。

アートとビジネスと言い換えていいかもしれない。

その作品や商品はだれのために作るのか。

作ることそのものに喜びを見出す人もいれば、届けた先の反応に喜びを見出す人もいる。

この社会ではどれだけ自分が納得していいものを作ったとしても、届かないと意味がないので外からの評価がどうしてもつきまとう。

単純にひとつ自分の好きな作品を作って、それをアートだと主張すればアートはたちまち成立する。

本来はそれが売れるか売れないかはまた別問題なのに、売れなければダメな作品となってしまう。

評価を気にした作品づくりは往々にしてビジネスやマーケティングに結びつく。

そうして自分自身が本当に作りたいものとの乖離が始まっていく。

マーケットイン(市場に迎合した作品づくり)とプロダクトアウト(自分が本当に作りたいもの)という言葉が、よくガラケーとiPhoneの違いで例えられるけれど、長く料理に携わってきて思うのが、芸術領域の仕事はプロダクトアウトであってほしいと願う。

もしくは他者評価を意識しないで自分自身が心の底からいいものだと納得して作れたものにしか芸術の真価が立ち現れないような気もする。

その域に達した時の高揚感を共有することさえむずかしいほどにとても言葉では表現できないもの。

人はどうしても相手の期待を背負い、それに応えようとしてしまう。

だれかを思って作る料理も素晴らしいものだけど、自分が作りたいものを作り、それに自分自身が満足していることが何よりも大きな喜びであり、崇高なエネルギーを宿している。

作為的でないもの。

内側から湧き上がってくるもの。

意識の外側からやってくる何かに耳をすましておくこと。

それを信じて待つこと。

もはや待つという行為すらも意識が含まれているから、もうただ空っぽであればいいんだと思う。

けれど時代や社会や人間性が簡単にそうはさせてくれない。

経済や生活の問題とうまくバランスをとっていかないといけない。

本当のお客さんは自分自身なのに。

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