偶然の出会い

インターネット技術がもたらした恩恵は計り知れないけれど、一番と言っていいほど失われつつある大切なことが偶然の出会いだと思う。

膨大なデータによって導き出される各個人の趣向に沿った好みや関心は、一見潜在的に求めていたことをくすぐる反面で、長い目で見ると偏りが起こり、すぐ隣にいる人との分断を生みかねない。

例えば本について考えると、今は本屋さんに行く機会も少なくなったし、実際に書店数も減ってきている。

本屋へは目的があって訪れることもあるだろうけど、ふと目にしたタイトルが気になったり、新しい発見があることは往々にしてあったりする。

それはすぐに役に立たないことかもしれないけれど、自分のアンテナが何かに引っかかるための体験の機会になっている。

インターネット上ではそのような体験は起こらないだろう。

旅もまた偶然の出会いが生まれるいい体験になる。

でもガイドブックやインターネットの情報を頼りにしていては、目に映る景色は確認作業で終わってしまう。

予定はそこそこに余裕を持った調整が、思いがけない気づきを得るきっかけを作ってくれる。

アイデアや発見は、違う要素の物事が出会った時に発動する。

組み合わせ、結合、それぞれのピースが予想外に重なると何とも言えない喜びを感じることができる。

その体験は料理を考える上でも重要なことだと思う。

いつもとは違う場所で、刺激を受け、インスピレーションを得る、そんな着想の積み重ねこそが自身のオリジナリティを育んでくれる。

とはいえ地に足をつけず変化ばかりを求めるのではなく、同じ毎日の繰り返しがあるからこそ気づける発見であるようにも思う。

毎日に埋もれないように、適度に外へ出ることが新しい出会いをもたらせてくれる。

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