今は目の前の仕事をこなすため、ずっと動いている。
時間との戦い、止まっていては提供が間に合わない。
おなかがすいてきても落ち着いて食べる時間がないから、
動きながらチョコレートやナッツでしのぐ。
まるで高い山に登っているかのように大袈裟に言ってみる。
そして調理に携わってる人の特権である、
つまみ食いが必然的に増えてしまう。
普段なら目新しい食材でないから、そそらないけど、
年末は比較的いい食材を使っているので、
そもそもの食材が美味しくて、ついつい食べてしまう。
ブリをお刺身でいただいたり、
黒毛和牛のステーキの端っこをいただいたり、
もちろんお客様に提供する分量外で。
下積みの時代はとにかく美味しい味を知ろうと、
よくつまみ食いをしてたし、しなければならなかったし、
お客様が残した料理をこっそり味見したりもしていた。
残って帰ってきた料理を食べるのは改善のためでもある。
何が美味しくて、何が美味しくないかを知ることは、
たとえ人に好みが違うとはいえ、料理を生業とする上で、
基礎の体幹として軸を定めておかなければいけない。
よくセンスを磨くには、たくさん質のいいものを見て、
実際に体験して、養わないといけないと言われる。
料理も若い頃にどれだけ美味しいものを食べたかで、
味覚のセンスは決まると思う。
ただ食べるだけではなく、なぜそれが美味しいのか、
どうしたらそうなるのかを考えることも大切だ。
そう思えば、料理を始めた頃に働いていたお店が
評判も良く繁盛していて、いい食材を使っていたことは、
今の味覚をつくる上で重要な要素であったのは間違いない。