よくアートのジャンルとして表現される
インスタレーションという言葉は、作品を観るというより
作品の中に入る、空間を含めて自ら体験することを指す。
空間を演出するには、音や光や奥行きなど、
構成する要素は多岐にわたり、作者の思想も含めて
プロデュース的なバランス感覚が重要になってくる。
広義の意味で捉え、俯瞰して見るならば、
個人各々の家に存在するインテリアの選択も配置も、
交わす会話も、発生する音も、料理の匂いも、
空間の中に成立するインスタレーションであると言える。
もっと視座を高くしていくならば、
建築も、歴史建造物も、街も、国も、人間の思考から
生まれた、壮大なインスタレーションの中に存在している。
その発想でいくと、特に個人の強い思想がつまったお店は
立派なインスタレーションという作品と言えるのでは
ないでしょうか。何も飲食店だけに限らず、雑貨屋さんも、
美容室も、物理的な店舗を構えてるなら全部そう言えるし、
そのお店の集まりが街を作り、文化をも育んでいく。
個人の思いが輪郭を帯び、形になって表出することで、
お店ができて総合的に空間が演出される。
お店も個人から生まれる作品だと解釈するならば、
アートという楽しみ方も出来るのではないかと感じた。
食べる楽しみ以外にも、観る楽しみ、人と接する楽しみ、
空間を感じる楽しみ、新しい意味を与えることができたら
もっと世界が広がる可能性はじゅぶんにあるはず。
ものが溢れ品質に差がほとんど見られなくなった今、
限られたもとある資源に違う角度から光を当て、
再定義、再解釈をすることが求められていると思うので、
その新しい価値をこれから探していきたい。