同じ国でずっと育ってる限り、
文化や美意識は否が応でも染み付いていくもの。
国民性、いいこともあれば好ましくないこともある。
同調圧力が悪く言われることもあるけど、
稲作中心の社会では、みんなでひとつのことを
協力しないことには生きていけなかった背景があるので、
仕方のないことだったりする。
また海に囲まれていることで、外敵が少なく
長きにわたる独自の文化を偶然にも築けてしまった。
その偶然性が料理にも大きな影響を及ぼしている。
日本には綺麗な水があったことで、
清潔感や新鮮さや、みずみずしさを獲得した。
お出しや刺身などの澄んだ装いは、
日本料理に欠かせない要素になっている。
また季節の変化が食材に多様性をもたらし、
手を加え過ぎずに食材そのものを活かす手法が発達した。
味噌汁、醤油、納豆、清酒などは発酵の力だけで、
もう味はほぼ完成している。
そういう意味ではクリエイティブというより、
いかに何もしないかが問われる料理かもしれない。
他の料理人はどうか知らないけど、
その精神や思想や美意識はやっぱり自分の中にはあって、
和食以外の料理を作る時でも意識をしてしまう。
外国の文化をまねるように取り入れて、
自国の文化とうまく融合させるのも日本の得意なところ。
どうしても身についてしまったものだから、
うまく活かすしか他ない。
偶然が積み重なってできた歴史の中の一地点にいる
必然性と意味を考えてみる。
今ある資源を活かし、それをうまく組み合わせて、
違う角度から光をあてる。
備わった美意識をうまく活用できますように。