余裕とがんばることのバランス

料理人という仕事は属人性が高く体力のいる肉体労働だ。
それにサービスも含めれば相手は対・人、でもあるので看護や介護のように感情労働の側面もあると思う。
体も使うし心にも負荷がかかるし社会的地位も低いのに、よくもまあ大変な仕事に就いたものだと感心する。
その大変さを乗り越えれるだけの喜びがあるのは確かなのだけど、まだまだその感触をうまく言語化できないでいる。

仕事が忙しいのは、それだけお客様に求められている、ということだからいいことなのだけど、忙しすぎるのは要注意だと思う。
どんな仕事でもどんな人でもやっぱり心や時間に一定の余裕がないと、視野が狭く周りが見えなくなっていく。
相手を待たせてしまったり、有益な情報を見過ごしてしまったり、他責思考に陥ってしまったり。
今まで数十年ずっとがむしゃらに仕事をしてきたけど、コロナのおかげと言ったら語弊があるかもしれないけど、考える時間ができたことで心の余裕の大切さを痛感した。
見える世界の捉え方がまるで変わった。
いろんな新しい物事に気づけるようになった。
より鮮明に、より俯瞰的に、自分の存在が時代のどこに立っているのかが見えるようになった。
反省して、後悔して、手遅れになったこともある。

心や時間の余裕って本当に大事。
実体験ではそう感じるものの、今の社会はなかなかそうさせてくれない。
不確かな未来に備えて仕事をしないといけない状況、個人で活躍できるようにならないといけない時代、仕事に家事に育児にSNSに忙しい毎日。
そんなことを言っておきながら自分もいろんな余裕を見つけるのがむずかしい。
一生懸命がんばったからこそ活きる余裕でもあるけれど。

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