出張料理レポート

お客様の自宅に行って料理をする。
パーティーのような大勢がいる場でもなく、何かのイベントのケータリングでもなく、ひと組のお客様と近い距離で接するというのは、なかなか普段できない体験だ。
物理的な距離以上に、人や料理との近さもまたいい。
大勢の場合はどちらかというと集まりそのものがメインであって、料理は脇役になりがち。
だからウェディングや宴会の料理は昔からどうも好きになれない。
料理がひとつの大切な要素なのはわかるけど、食べた人の記憶には残りづらいような気がする。
それらの意味において、ひと組のお客様と空間的にも関係的にも密に接するということは、生産性が悪いかもしれないけど定量化できない貴重な体験であることには間違いない。

自宅に他人を招くことに抵抗のある人も多いだろう。
そんな中で出張をお願いするくらいだからお客様にとっても何か特別な日であり、何かの節目。
誰かの人生の瞬間に立ち会える仕事ってそう多くはないはず。
料理ならではのいいところを再認識する機会になった。

昨日のお客様に関しては、普段接することのないZ世代と呼ばれる若い人とのコミュニケーションがとれて、とてもいい刺激を受けた。
将来はお店がしたいという夢を持っていろんなことに挑戦している姿は、若いってだけで瑞々しく透明感があって麗しい。
求められて応えた答えが果たして役に立つのだろうか。
ワクワクするような未来の明るい楽しさが自分に伝播したような気がした。
対価以上のプレゼントを逆にいただける。
これが仕事における最高の循環なのではないか。

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