記憶に残らない料理

こう見えて料理のレパートリーが少ないぼくは、わりと同じメニューをずっと作り続けている。
この食材にはこの調理法が最適だと一度思ってしまったら抜け出せないタイプ。
幸か不幸かそれでいいんだと思えた気づきがあった。

いろんな味の変化を楽しんでもらたいという気持ちはもちろんあるし、お客様もそれを望んでる人は多いと思う。
毎日行くわけではないのに日替わりメニューだとなんとなくわくわくする。
お店側も同じものばかり食べさせたくないという心理になる。
でも、芸人さんが同じ鉄板ネタを繰り返してするように、このお店はこの料理、というような代名詞的な存在感をつくることも大事なこと。
記憶のフックとなりイメージが想起しやすくなる。
幕の内弁当は豪華に見えるけど、情報が多く、ひとつひとつの料理はぼんやりしていて記憶には残らない。
あれもこれもと足していくとインパクトが薄まっていく。
ワンコンテンツにワンメッセージ。
引き算の美学。
iPhoneのように洗練されている方が世界観は伝わりやすい。
これでもかといろんな種類をのせてしまっているので少し反省をした。

作り続けてる料理があることで、少なからずお客様に印象を与えているのは確かだ。
そのことがレシピ本を作っても納得してもらえる布石になっていたはず。
ひとつひとつが際立ちながらも、記憶に残るような全体を作ることを目指してみよう。

関連記事

  1. 忍耐と早さ

  2. 料理とデザイン

  3. 無駄を知る

  4. 時間は買える

  5. 美味しさの先にあるもの

  6. 素直な嫉妬