こい願わくは④

活動をすすめる上で、書く作業はまあ骨が折れるけど、取材をするのは楽しい。
テーマが決まっているので話も聞きやすい。
何より忙しい中で貴重な時間をいただいているから、とても稀有な体験だ。
人生は人それぞれ、いろんな道のりがあって、いろんな考え方があっておもしろい。
自分にできないことができていて羨ましく思うこともあれば、自分のお店に活かせるヒントをもらうこともあるし、学べることがたくさんある。
みんなすごくて、自分なんてまだまだだなあと思う。
正直なところ、有名人でもない街の飲食店のオーナーの人生を聞いて、読者目線で考えると果たしておもしろいのかと思う部分もあるけど、市場に忖度せずとも楽しいから続けることができている。

今まで世の中にないものを作るのだから、そう簡単にはいかないだろう。
音声や動画がメディアの主流になっている現状で、今どき文章なんて時代にそぐわないかもしれない。
それでも文章でしか表現できない感情の機微や息づかいがあると思っている。
それに言葉は人の心を動かすくらいのエネルギーを秘めている。
つくる過程がおもしろいから完成しなくてもいい。
なくなるお店だって出てくるだろう。
なくならないお店を厳選できてるならうれしい。
飲食業界に新しい意味や価値を足せないかが自分にとっての大きなミッション。
NFTやWEB3の概念と相性がいいのではと思っているので勉強しながら考えていきたい。
こい願わくは。
もしも願いが叶うなら、食やお客様と真摯に向き合ってがんばっている人が報われる、そんなやさしい世界がつくりたい。

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