こだわりをゆるめる

料理を生業としているものとして、お客さまには美味しい状態で食べてもらうことをこだわりとしてきた。
温かい料理は温かいうちに、冷たい料理は冷たいうちに。
良くも悪くも身体や思考にこびりついた文化のようなもので、自分の中での常識や慣習になっていた。
思い込みは所詮、思い込みにすぎない。
こだわりが強いことは職人っぽくて、ひたむきで、一途で、どこか美徳とされている風潮がまだまだ根強くあると思う。
いろんな新しい技術などの情報には関心があり、わりと柔軟な考え方ではいるけど、こと料理に関しては今までの知識や経験が逆に足かせとなり視野を狭めていたようにも感じる。
灯台下暗し、自分のことは棚に上げがち。

こだわりが強いものでお弁当の作り置き、詰めた状態で置いておくということは避けていた。
イベント出店などもそんな理由から、極力避けて通ってきた。
また作り置きは売れなかったらロスになるリスクがある。
利益の損失というよりも時間をかけて作ったものを廃棄する際の心の負荷がとてつもなく大きい。
でも視点を変えてみるならば、それは機会損失になる。
お客さまが欲しいタイミングで買えなければ、もう次が二度とないような世界線なのが 商売の原理原則でもあるから。

今回の毎週土曜日に外でお弁当を販売していることは、今までの流れでいくと断っていてもおかしくはない。
でも、現状に安心しててはいけない変わりたい、という気持ちが自分の限界を超えていった。
いろんなことがあって様々なことを学んだ今だからこそ決断できたことかもしれない。
こだわることが悪ではないけれど、少しゆるめておくだけでも逃げ遅れないですむ。
常温のお弁当が人気なようで美味しかったの声もちらほらいただく。
売れ残りもなく楽しみにしてくれるお客さまもいるようでなにより。
もちろん出来立てに勝る美味しさはないけれど、詰めてから時間がたってこそ美味しいのがお弁当という概念であり世界観だったのかとようやく気付かされたような気がする。

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