お弁当の世界線

ずっと長く料理をしてきたのに、お弁当を作ることはお店を始めるまで一度もしたことがありませんでした。
いろんなジャンルの料理の経験から、なぜお弁当を選んだのか。
いずれは独立開業をするという料理人のセオリー通りの道を歩んできたわけですが、ずっと自分はどんなお店をしたいかが定まらずにいた記憶があります。
飲食店の開業資金はバカになりません。
いわゆる従業員を雇って普通のお店をしようと思ったらかなりのリスクです。
そんな風にして周りでお店を始めている人は本当に尊敬します。
何かを始めるには何事も小さなことから、と言い聞かせ小さなお店でできることは何か、と考えたのがテイクアウト、お弁当にしたきっかけだったと思います。
マーケットをしっかり読んだつもりではないですが、時代の流れが外食よりも中食、内食に向かっているというデータもありました。
それに目の前に広がる公園でのんびりお弁当を食べるというライフスタイルを提案できたら、なんて意気込みでした。
あまり愛想のいい接客ができるわけではないし、お客様と話すのも得意ではなかったので、テイクアウト専門でちょうどいいと思っていました。
公園のシーズンは短い、量産ができない、こだわりが強い、いろんな誤算もありながら、おかげさまである程度の認知は広まったような気がします。
経験したことのないお弁当も試行錯誤しながらオリジナリティは意識しました。
開店当時は過去のあらゆる経験や資質が収束してお弁当というジャンルを選んだのだと納得していました。
それから数年が経ち、周りの環境も社会情勢も個人の価値観も当然のように変化しています。
常に更新される経験値や学習や思考の散らばりを収束すれば、また違った景色が見えてくるのは当然の流れです。
実際にもうひとつの活動であるREATABLEは、過去のすべてが更新されて収束したひとつの形です。
自分に対する納得を優先しずらくなるのが大人の社会、周りから求められることをするのか、自分の人生をあるがままに振る舞うのか、そんな葛藤に終わりはありません。

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