里山料理会の振り返り

道中で今にも沈みそうな夕日が映し出す紅葉のまばらな色彩があまりにも美しかった。

能勢はノマディックさんで開催した里山料理会。

到着する頃、辺りはすっかり暗くなっていて広がる田園風景も一日の終わりを告げようとしている。

都会と違って目に飛び込んでくる情報が少ない分、自然と視線や感性が季節を捉えるのだろう。

どきどきした気持ちで迎えるはじめての試み。

自分のお店ではないお店で料理を作るという機会と場。

お客様の家で作る出張料理とはまた違った緊張感が押し寄せていた。

遠いところまでわざわざ来てもらうというハードル、決して安価ではない値段設定、楽しみにしてくれている期待にきちんと応えることができるのだろうか。

それに料理の下準備も納得のいかないまま車を走らせた。

会が始まるまではそんな気持ちでいっぱいだった。

事前打ち合わせで動線を確認していたものの、使うお皿や細かい段取りは当日の気持ちに委ねていたので多少の不安はあったけれど、お客様が揃うまでに時間の余裕があったので、なんとか準備を整えることができた。

いつもメニューを決めるのはギリギリ、リハーサルも疎か、細やかな配慮も行き届かなかったりするけれど、本番ではきちんと諸々間に合うことにかけては根拠のない自信を持っている。

その分イメージトレーニングは入念にしているつもり。

どれだけ準備していても、その時その瞬間の発想でしか作れないものが芸術領域にはあると思う。

簡単には言語化できない無意識の記憶がつながっていくような感覚。

そう思えるほどに料理に関しては、予定していた以上のパフォーマンスが発揮できたと言える。

お客様の舌も千差万別、全員に満足してもらうような料理を作ることは不可能だけれど、作り手の気概や感情の機微は少なからず等しく受け取っているはず。

ただそれだけでも十分な価値を提供できたのかもしれない。

そのことこそが料理において本質的に重要なことかもしれない。

余談として、記録として、今回のメニューを記しておこう。

一品目:サーモンのミキュイ お米のサラダ 柚子風味

ミキュイとは、生でも火を通したものでもないほろりとした食感が楽しめる低温調理方法。お米のサラダはお寿司の構造をヒントにして組み合わせたもの。旬の柚子果汁でサーモンをマリネして仕上げに柚子皮を振りかけた。

二品目:能勢野菜のバーニャカウダ 落花生のディップ

通常のバーニャカウダは生野菜を使うことが多いけれど、それぞれの野菜に適したやさしい

火入れをした。ディップに生の落花生を混ぜ込んで、あえてザラっとした食感で野菜の濃厚さを演出した。

三品目:セミドライトマトとポルチーニのスープ 根菜のフリット

天ぷらと天つゆ、スープにクルトン、のイメージで今回一番挑戦したオリジナル料理。つけ汁としてもスープとしても楽しめるような一品に。

自家製天然酵母パンの焼き上がりにも合わせて提供した。

四品目:サゴシのセージバターソテー 3種の大根添え

ハーブの香りを移したバターで旬のサゴシをソテー。能勢の大根をじっくり炊いた付け合わせと、ピューレにしてクリーミーにしたソースと、紫大根を軽くソテーした食感のバリエーションで。

五品目:豚肉のコンフィ レンズ豆の煮込みと黒キャベツ 黒酢ソース

塩麹で作った塩豚をゆっくり低温調理してホロホロとした食感で。お肉を邪魔させない野菜とレンズ豆を煮込んだものと半生に火を入れた黒キャベツを上に。甘酸っぱく煮詰めた黒酢のソースは豚の角煮をイメージして作った。

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