今年に入ってから始めたランチコース。
こちらが日時を指定してご来店いただき、コース仕立てで料理を振る舞う。
決して値段が安くはないにもかかわらず、お陰様で楽しみにしてくださる方がいて本当に有り難い体験をしている。
格式高い料理ではないけれど、今まで自分が体験して学んできたすべてを料理という表現に落とし込んでいるイメージだ。
何かひとつのことを極めるのが苦手なので、いろんな料理いろんな手法が混在しているコース内容だと思う。
ほぼほぼ知ってるお客様ばかりなので、年齢層や好みを考慮しながらメニューを考えている。
テイクアウトでは味わえないようなライブ感、会話や反応などを含めて、温度や盛り付けをできるところがありがたい。
そして毎度のように直前までとても緊張する。
コース料理は、全体を通してひとつの作品だと思う。
ミュージシャンのライブのセットリストのように、映画やドラマの脚本のように。何で始まり何で終わり、間の取り方、緩急の仕掛けなど、考えないといけないことがたくさんある。
料理においては食材が季節によって変わるので、その変化を捉えてないといけない。
とはいえ、正直そこまで緻密に考えれるほどには、まだまだ経験不足だと自覚している。
それでも精一杯お客様の嗜好を想像して、内容を考えていることに意味があるような気もする。
毎度毎度終わった後には反省をするけれど、喜んで帰ってくれる姿に胸を撫で下ろす。
料理のはフランス料理や日本料理とあるように、各国の料理体系は存在するけれど、食材の違い以上に文化を背景とした考え方だと思っていて、フランス料理なら足し算、日本料理なら引き算、イタリア料理ならシンプルと言ったように、突き詰めれば本質的に思想が浮かび上がってくる。
お客様に対しては何料理を作っているかを伝える方がわかりやすいけれど、料理とはそもそも万人に開かれた世界の共通言語なので、極論何料理でなくても目の前に出された料理は、その人が作るその人料理なのだ。
そんなアイデアを、そんな考えを含めた作品をコース料理で楽しんでもらえたら幸いである。