よく人間の特徴を言うとき、男性なら狩りをするための剛健さや子孫繁栄に行動がもとづいているだとか、女性なら家族や育児をすためにコミュニティー作りや共感力に長けていると説明される。
ホモサピエンスの歴史を考えると、狩猟採集の時代が圧倒的に長く、紀元後のたった2000年間なんて微塵のようなもの。
なので人間は、先の特徴に大きく依存していると言って間違いないと思う。
ところが社会は紀元後めまぐるしい勢いで生活環境が変わっている。
しかも加速度的に。
アナログ派なんて言ってられないほどに、あらゆるところでデジタル化が進んでいて、それを強制すらされかねない社会になってきている。
みんなが当たり前に持つようになったスマホに、本来の人間の身体的な機能が追いついていない。
今の社会のあり方に人間は適応しきれていないと著者は警鐘を鳴らしている。
行動経済学の分野では、どうしたら人が動くのかなんてすでに研究され尽くしている。
商品が売れやすい陳列場所、キャッチーな売り文句、配色や音や香りに至るまで。
限定や人気といった言葉に弱いこと、割引きやセールにうれしくなるところ。
特に大きな企業はその辺りを巧みに使ってマーケティングを行なっている。
スマホに至ってはすでに周知のとおりで、利用者の滞在時間を少しでも長くしようと興味を引きようなコンテンツが溢れかえっている。
スマホなしの生活が考えられないくらいたくさんの人に浸透してるということは、みんな1日に数時間以上は画面を見ているはず。
自分好みにカスタマイズしてくるオススメを見てしまうくらいには、忙しいと言いながらも暇なのかもしれない。
疲れたとき、何も考えたくないとき、不思議と手放せないような仕組みに設計されている。
スマホを持っているだけで集中力が下がる、みたいな実験データも本書で紹介されていた。
便利さと引き換えに何か失われるものがあって、つくづく物事はトレードオフの関係にあるように思う。
とはいえ時代の流れは不可逆的で今さらスマホのない生活には戻れない。
スマホに依存しないための対処法は意識的に遠ざけることだと教えてくれる。
何が必要で何が必要でないか、それはスマホだけに限らず、モノの所有や時間の使い方や人との関わりまで、自分のライフスタイルに合った見極めが大切になってくる。
怠けずに理性をはたらかすことは心理的にも負荷がかかることなので、いろいろとむずかしいことを求められる時代だなあと思う。